日常。音楽多め。

あなた

あなたは今何をしていますか?

誰かと笑えていますか?

誰かと泣いていますか?

あなたはとても顔立ちが美しく、どこへ行っても可愛がられていました。いつも笑顔で人懐っこく、誰からも好かれていました。なのできっと今頃は誰もが羨むイケメンになっているのでしょう。頭も良く、とても賢かったので、大学を出ていいお仕事をして、美人の奥さんを捕まえて幸せに暮らしているのでしょう。31歳、とても充実した生活なのでしょう。

 

 

私はなんとか頑張っています。今は生まれ育った街を出て、東京で生活しています。

仕事にも恵まれ、周囲にも恵まれ、幸せに過ごしています。

幸いなことに、大きな病気もせず、あの頃と変わらずにこにこ笑えています。

でも、少し体調を崩したり気が弱るとあなたのことを思い出してほんの少し寂しくなる時があります。涙を流してしまうことがあります。

今日はそんな日でした。

 

 

 

多くの人に愛され、少し嫉妬していた時期もありました。

いつも満遍の笑みを私に見せてくれていました。

どの血を引き継いだのか、女好きでいつも人のスカートをめくっていました。わかりやすいほど若いお姉さんが大好きでしたね。

若くて綺麗な看護師さんが来ると機嫌がよく、婦長さんがくるとそっぽ向いていました。

 

時には喧嘩もしたね。取っ組み合いになって、ひっかきあってました。私の顔にはまだあなたが引っ掻いた傷が残っています。大人になって、化粧をするために鏡を見るたび、毎日思い出します。

 

たくさん旅行もしました。たくさん写真を撮りました。たくさんビデオにも残っています。あなたと一緒に過ごせて本当に幸せでした。

 

 

ある日突然話せなくなって、遊べなくなって、すごく寂しかったのを覚えています。

あんなに元気に走り回って一緒に遊んでいたのに、突然駅前のアピタの前で転んでそれから遊べなくなってしまいました。

毎日顔を合わせていたのに、突然1週間に1回しか会えなくなってしまいました。

 

そんな日常が当たり前になりました。

 

そして色んな出来事があり、あなたは笑うことも喋ることすらしなくなりました。話しかけても反応してくれなくなりました。

いつも通り、日曜日みんなで会いに行きました。何も反応しないあなたに一生懸命話しました。ちいさな手を握って。私はその頃から強がりで、絶対にあなたの前では泣きませんでした。あなたと別れたあと、1人でこっそり泣いていました。かっこわるかったね。情けないね。

 

 

そして、月曜日。あなたは突然いなくなりました。

 

 

それから何日間泣いたでしょうか。毎日悲しみに暮れていました。

 

「あんまり泣いていると天国から笑われるよ」

 

と、言われるほど泣いていました。

 

 

 

どれだけ想いを伝えても伝わらないのはわかっています。

だから、今私が生きているうちに伝えたい人にはしっかり伝えておきたいと思うようになりました。それはあなたから教えてもらいました。

ありがとう、ごめんね、大好きだよ、おはよう、おやすみ、また明日ね、あなたがいてよかった、頑張ろうね、辛かったね、頑張ったね、よかったね。色んな言葉をしっかり人に伝えたいと思えるようになりました。

もちろん、そんなことを言うと鼻で笑う人もいます。でも、鼻で笑われようと伝えなければならないのです。だって死んだら伝えられないから。

 

 

私は1人の人間なので、あなたの分まで倍長生きすることはできません。でも、あなたが生きれなかった人生を噛みしめながら生きています。

だから安心してください。こんな日もあるけど、でも一生懸命生きています。

一生懸命幸せを噛み締めて生きています。

たくさん食べてたくさん笑ってたくさん寝てたくさん泣いてたくさんへらへらして元気に生きています。

 

 

あなたは生きていたら今31歳。あなたと同年代の男性を見るたびに、あなたが生きていたらどうなってたんだろうと想像します。重ねて見てしまう癖は何十年経っても変わりません。

最近ではやっと微笑ましく見れるようになりました。

 

 

私がこの人生を終える日には笑っていたいと思います。そのために、今限られた時間を目一杯自分のため、自分を愛してくれる人のために生きたいと思います。

 

 

優しさ、強さをくれたのは紛れもなくあなたです。あなたがいて本当によかった。

 

 

 

 

これからもよろしくね。たまに夢に出てきて会えたら嬉しいです。

時には私のだらしなさや情けなさを叱ってください。

時には頑張ったねって褒めてください。

それではおやすみなさい。